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2023年9月号 絵本のSOBA

2023年9月の”推し”絵本

※各絵本をクリックするとコメントが表示されます。

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今月のお客様

滋賀県「近江八幡おはなし研究会」のみなさん

滋賀県近江八幡市で、50年以上に及び地域に根差した読書ボランティア活動を実施。質の高い絵本の読み聞かせとストーリーテリング(=素話。物語を覚え語り聞かせる手法のこと)で子どもたちの読書環境の充実に尽力し、滋賀県文化奨励賞をはじめ県内で多数表彰されている。2004年、子どもの読書活動優秀実践団体として文部科学大臣表彰。2022年「第52回野間読書推進賞」(団体の部)受賞。

滋賀県「近江八幡おはなし研究会」のみなさん

――1961年にグループを結成され、以降50年来にわたって読書ボランティアを続けていらっしゃいます。どのようにグループを立ち上げられましたか。また長年、活動を継続する秘訣を教えてください。

1961年に図書館を利用していた母親たちによって、子どもたちにもっと絵本を楽しんでもらいたい、幼児期から絵本がことばや心の成長に大きくかかわることを知ってもらいたいという思いから始まりました。1967年から定期的に「おはなし会」などの本格的な活動を開始しました。

活動が続けられるのは、まず私たちが楽しいこと。ストーリーテリングを覚えるのは大変だけれど、子どもたちとその世界をたっぷり共有できた時の喜びが支えになっています。そのためには仲間による練習会は欠かせず、その時の忌憚ない感想や意見がよりおはなしの世界を深めます。仲間があってこその喜びです。

――活動の中で、子どもたちには「おはなし会」、大人には研修・講座を提供されてきました。
大人向け研修・講座の講師には、東京子ども図書館の名誉理事長である故・松岡享子先生をはじめ、名だたる方々をお迎えになっています。自分たちで研修・講座をひらくとき、どんな工夫をされてきましたか。

滋賀県「近江八幡おはなし研究会」のみなさん

当時研修を受けるには遠くへ出かけていかなければならなかったので、それでは自分たちで研修会・講座を開こうということになりました。ストーリーテリングの講習では、子どもたちにお話を届ける、絵本を差し出すことの意味をたたきこまれ、今も宝になっています。

講座を開くにあたっては、「今何を学びたいか」、「何を伝えたいか」をみんなで話し合い、講師にお願いしています。単発では学びが深まらないと考え、できるだけ継続して講座を受けるようにしました。学ぶ心を持ち続けたいという仲間の気持ちが支えになっています。

――おはなし会は、対象年齢別に「0~2歳」「3~4歳」「5歳以上」と分けて開催されています。
おはなし会のプログラムを組むときは、どのような視点で決めていますか?

滋賀県「近江八幡おはなし研究会」のみなさん

年齢によって、ことばの世界・経験の世界は違います。子どもたちがより楽しめるように年齢で区切っています。プログラムは季節感も考えながら、物語・科学・ことばの世界等織り交ぜながら例会で検討しています。

「0~2歳」はことばの響き、繰り返しの楽しさ、身近な世界・出来事を中心に組み入れています。

「3~4歳」ではストーリーテリングを必ず1話入れることにしています。ことばを聞き、イメージできる力を養ってこそ、おはなしを楽しめ、登場人物の気持ちを思いやることもできます。ひいては考える力もつくでしょう。

「5歳以上」はストーリーテリングを2話入れることにしています。

――年齢別の “推し”(おすすめ)絵本・おはなしを教えてください!
また、実際に子どもたちの前で披露したとき、どんな反応がありましたか?

●0~2歳
「がたんごとん がたんごとん」
「がたんごとん がたんごとん」

出版社 福音館書店
税込価格 990円

「がたん ごとん がたん ごとん」と電車の走る音と「のせてくださーい」の繰り返し。そのたびにおなじみのものを乗せて出発。心地よいことばが繰り返される。シンプルなことばと絵が子どもの心をつかみ、何度も読むうち「どうぞぉ」「満員でーす」などと話しかけ、絵本の中に入り込んでいきます。

最後には「バイバイ」と手を振ります。「がたんごとん」と走る音が身体も心も心地よい揺れを感じ、「もう一回読んで」につながっています。

●3~4歳
「ちいさなねこ」
「ちいさなねこ」

絵 横内 襄
出版社 福音館書店
税込価格 1,100円

こねこがお母さんのいない間に外へ出ていく。外は危険がいっぱい。子どもにつかまったり、自動車にひかれそうになったり、大きな犬に追いかけられたり。そのたびに、緊張や動揺が走り、切り抜けるたび「ほーっ」と身体の力がぬける。子どもたちは主人公のこねこと一緒に大冒険をしています。お母さんねこがこねこの声を聞きつけやってきたとき、心の底から安心した顔を見せます。部屋に戻りお母さんのおっぱいを飲んでいるページでは最高の幸せを感じているようでした

●5歳以上
ストーリーテリング「三びきの子ブタ」
ストーリーテリング「三びきの子ブタ」

所収 『イギリスとアイルランドの昔話』
編・訳 石井桃子
画 ジョン・D・バトン
出版社 福音館書店
税込価格 1,760円

ストーリーテリング「三びきの子ブタ」
ストーリーテリングのようす。
「おはなし会」ではろうそくを灯し、子どもたちを非日常にいざなっています。

絵本と違い、ことばだけから想像していくストーリーテリング。わらの家を建てた子ブタはオオカミに食べられ、ハリエニシダで家を建てた子ブタも食べられてしまう。オオカミはレンガで建てた家を吹き飛ばせないと知ると、子ブタを外へ出るようにと誘い出す。オオカミと子ブタの知恵比べが始まり、これも3回繰り返される。最後、子ブタは最大の知恵を働かせオオカミをお鍋でぐつぐつ煮て食べる。一見残酷だと捉えがちですが、聞いている子どもたちは決してそうは思っていません。オオカミが食べられると大満足。子どもたちを単に怖がらせているのではなく、生きるうえで危険を回避する知恵(力)、そして得た安全で幸せな生活が子どもたちを満足させます。昔話の中の3回の繰り返しは、子どもたちが先を予想しながら聞き、生きる知恵をたっぷり味わうために必要なことです。

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