交通の便がよくなった今でも、雪国は格別の風景をもっている。
作 後藤竜二
絵 長谷川知子
出版社 新日本出版社
税込価格 1,650円
冬、地吹雪の中でりんごの選定をする両親、馬やにわとりの世話をするお兄ちゃん、妹はおばあちゃんと晩ご飯の準備。そしてぼくは、風呂焚きだ。春休みになると、鉛色の空が青いガラスのように透き通って、太陽の光が温かく感じられるようになる。そんなある日、「かた雪だぞ!」とお兄ちゃんが叫ぶ。積もった雪が一面かたく固まるんだ。きょうだいは、かた雪の野原に馬ぞりを引き出す。「行くぞ」馬ぞりは雪煙をあげながら月夜の丘をかけくだる。たった一日のかた雪の日が、大人になっても宝物のように心に残っている。