食べられるためだけに育てられた命にも、愛の記憶があるかもしれない。
作 はせがわゆうじ
出版社 中央公論社
税込価格 1,540円
ぼくはもうすぐ食べられる牛です。もっと生きて、動物園のゾウやキリンみたいに、みんなに愛されたかったな。そうだ、食べられる前にお母さんに会いに行こう。ぼくは子どものころ、この牧場につれてこられたけれど、お母さんを覚えている。あっ、お母さんだ! ボクにはすぐわかった。でも、ぼくは会わない方がいいんだよね。さようなら。だけど、お母さんにわからないはずがない。お母さんの走る姿が……。「いただきます」の向こう側には、命の鼓動、親子の営みなど、多くのことが積み重なっている。ありがとう。人間のために命をささげてくれる多くの食べ物たち。