• 家の光協会が開催する
  • さまざまなコンテストや
  • 地域に読書の輪を広げる
  • ための講座等を紹介します

一般社団法人 家の光協会は、
JAグループの出版文化団体です。

「薬師堂の架け橋」 _読書エッセイ

「薬師堂の架け橋」

佳作 『薬師堂の架け橋』 片山ひとみ  「あんたらぁ、字が読めるんかな。ふん」  不意に背後から響いた冷たくしわがれた声。  一つ違いの小学生一年生の妹と振り返った。  当時、父の実家があった岡山と兵庫の県境の山村へ父母 …

「旅立ちの文庫本」

佳作 『旅立ちの文庫本』 大月ちとせ  その本屋は、商店街のアーケードが途切れた場所にあった。晴れた日は、陽を受けて光り、雨の日も濡れて輝いていた。  父が私をそこへ連れて行ったのは、小学六年の冬休み、祖父母の住む町にU …

「私と姉とアン・シャーリー」

佳作 『私と姉とアン・シャーリー』 隂田晴代  私は昭和二十八年生まれです。敗戦後の日本にようやく確かな陽の光が見えてきた頃です。父は地方公務員でとても厳格な人でした。食べるには不自由のないそこそこの暮らしでしたが、我が …

「母と私の最高の一日」

佳作 『母と私の最高の一日』 吉田恵利子  初夏の風を頰に感じながら私は、車椅子をぎしぎしと押した。  「お母さん、こっちに行ってみる?」  木綿の帽子を被る母は普段よりも穏やかに見えた。入院して約半年になる。病室で過ご …

「友は蝶のように」

佳作 『友は蝶のように』 小柳美幸  「もし棺に一冊だけ本を入れてもらうなら、どの本にする?」  静まりかえった図書館で、どちらからともなく声をひそめて私たちは顔を寄せ合った。るいの制服からは、香水の香りがふわりと漂った …

「背中のぬくもり」

佳作 『背中のぬくもり』 田上裕子  「扉を開けるのが怖い」と息子が頻繁に口にするようになったのは、中学も二年目の秋頃のことでした。毎日不安そうな顔で呪文を唱えるように繰り返されるその言葉の意味の深刻さを私が理解したのは …

「 図書館通いの向こうに」

佳作 『図書館通いの向こうに』 宗政由美子  私は本をほとんど読まない、というより本を読むことが苦手だ。幼い頃から読書とは無縁だった。二歳の頃、父が大病を患い、長い間入院していて、母はその看病でほとんど家にいなかった。そ …

「背中を押してくれた本」

優秀賞 『背中を押してくれた本』 岩野聡子  「いのちを育てて、いのちをいただく、そんな仕事がしたい」  志望校を尋ねた私に、当時中学三年生だった息子が答えた返事だった。「え?」とすぐには理解できなかった私に、「畜産の仕 …

「読書会で出会った本」

優秀賞 『読書会で出会った本』 三島葉子  二〇二〇年の正月、新型コロナウイルスが日本に上陸する少し前だった。町の本屋の読書会に参加した。その日は各自、おすすめの冊子を持参して皆に紹介する企画になっていた。十数名の出席者 …

「告白」

優秀賞 『告白』 渡部陽菜乃  おそらくかなりの本好きであろう皆さんの前でこんな話をしていいものか迷ったが、せっかくなので応募させていただこう。だって、今の私は紛れもなく「本が好き」だから。  なぜこんな前置きをするかと …

 

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