「ページのはざまのつむじ風」
佳作 『ページのはざまのつむじ風』 伊藤えみ・イギリス・41歳 普段は冷涼なこの地域が珍しく暑かった二年前の夏、甥が私の両親、つまり彼の祖父母と共に我が家に遊びに来た。最初の一週間は両親がいてくれるのでいいけれど、後半 …「洋食屋物語」
佳作 『洋食屋物語』 織田桐真理子・鳥取県・61歳 「じゃ、行ってきます。」 古びた木の扉をあけ、息子と娘が飛びだして行く。子供達の見慣れないサラリーマン姿に私の方がなにやら照れ臭い。 一台の車と一台の自転車を見送り …「旅をする木が授けてくれたもう一つの時間」
佳作 『旅をする木が授けてくれたもう一つの時間』 佐藤勇児・岐阜県・36歳 私が星野道夫さんの『旅をする木』に出会ったのは、大半の視力を失った25歳の時でした。今では『旅をする木』に授けてもらったもう一つの時間と共に生 …「さつきのちょこっと感想文」
佳作 『さつきのちょこっと感想文』 吉森紗都季・東京都・19歳 今年の春に読書好きの祖父が携帯電話デビューをした。祖父はもともと福岡のマンションで一人暮らしをしていたが、 「腰も痛いし、そろそろ時期だと思うんだよなぁ」 …「ランチタイムを、あなたと」
佳作 『ランチタイムを、あなたと』 村上愛世・東京都・48歳 もう二十年以上も前、私が会社員だった頃のお話。 私には四人のランチ仲間がいた。全員女性で先輩から後輩まで年齢は様々。時計の針が十二時を指すと、ランチ片手に …「姉が教えた貸本屋」
佳作 『姉が教えた貸本屋』 中村実千代・栃木県・65歳 小学校一年生の春に、学校からの帰り道で道路を渡ろうとしたら、バイクにはねられた。 傷は出血の割には大したことは無かったが、そののち、事故に遭った道路を渡れなくな …「馬馬虎虎(まあまあふうふう)」
佳作 『馬馬虎虎(まあまあふうふう)』 斎藤ヒサ・秋田県・89歳 最近、有名人が、人生の終りにあたり、終活や、自分の生き方、思いを書いたエッセイ自分史を出版しています。 私は、もうすぐ九十歳。体の事を考えると明日の日も …「青い辞典」
優秀賞 『青い辞典』 杉村圭志・奈良県・55歳 九月の残暑厳しい日、パクさんは日本での生活を終え韓国へ帰っていった。コロナ禍の中社内では送別会もままならず、静かなお見送りになってしまった。 彼は日本語が達者で、私より …「夜明けの会」
優秀賞 『夜明けの会』 磯前睦子・愛知県・64歳 ご主人の実家が木曽の妻(つま)籠(ご)近くにある友人がいた。私を含む仲間たちはその友人に誘われて、名古屋からたびたび木曽に遊びに行くようになった。友人のお姑さんが一人住 …「とくべつなよるに」
優秀賞 『とくべつな夜に』 海老澤仁華・茨城県・17歳 この本を開くといつも思い出す。私にとって忘れられない日。三月十一日の東日本大震災。 私の住む水戸は梅の名所。春を待つ満開の花の甘い香りが漂うあの日、私は小学一年 …