青春の一ページを
佳作 青春の一ページを ※作者希望により、お名前を非公開としています。沖縄県・17歳 私が中学生最後の年に、学級文庫ならぬ二人文庫というものを作ったことがある。二人で作ったから二人文庫。そのままでネーミングセンスが少し …本といつまでも
佳作 本といつまでも 小林 香・長崎県・46歳 今、幸せかって尋ねられたら、とても幸せだって答えるだろう。私の毎日はいつもそばに本がある。仕事場は学校図書館だ。願ってもない人生だ。大好きな子どもと本。本はこれまでの私の …カナちゃんの贈り物
佳作 カナちゃんの贈り物 南川亜樹子・徳島県・39歳 私の勤める患者図書室には毎日年齢・性別を問わず、様々な人がやって来る。その光景は、一見普通の図書館と変わりがない。ただひとつ違うのは、ここに来る人の多くが、怪我や病 …絵本を読むのは楽しいな
佳作 絵本を読むのは楽しいな 城田由紀子・奈良県・54歳 息子の声がぼんやり聞こえる。夢を見ているのだろうか。 「めっきらもっきらどーんどん」 さっき私が読み聞かせしていた絵本の一節だ。横を見ると息子が小さな手で絵本 …私は父似
佳作 私は父似 坂本珠恵・大阪府・56歳 林芙美子の『放浪記』は、母の愛読書だった。 貧困や飢えにもめげず、職を転々としながらも自分の信じた道を進む。その力強さ、したたかさに内気な母は惹かれたのだろう。「お芙美さんは …桔梗の窓
佳作 桔梗の窓 川島悦子・群馬・47歳 いちめんの桔梗の花畑……そんな風景に、ずっと憧れていた。 だから、今の家に越してきて、庭にはじめに植えたのは、桔梗だった。 桔梗は青葉をすいすいと …母と本と私
佳作 母と本と私 田中 誠・茨城県・73歳 大正二年生まれの母は、読み書きが出来ない人だった。 私は物心がついてからも、その事で母に対して不便や不満を感じた事もなく育った。 私は昭和十九年に、津軽海峡に面した小さな …コーヒーが冷めないうちに
優秀賞 コーヒーが冷めないうちに 小森ちあき・大阪府・52歳 最後の言葉「もう口も聞きたくない」と主人に言ったのはもう十三年前の事。その日、私達夫婦は私の友人K子夫婦と行きつけの珈琲店で昼食を共にしていた。その最中に主 …叔父と『ハイネ詩集』
優秀賞 叔父と『ハイネ詩集』 板倉孝敬・神奈川県・79歳 卒寿をとうに過ぎた叔父から、珍しく電話があったのは二年前だった。 寡黙な人で、滅多な事では連絡してこない。ただ、私が住む地に、地震など天変地異があると、必ず「 …台所には秘密がある
優秀賞 台所には秘密がある 荻原純子・埼玉県・32歳 台所には秘密がある。 古い食器棚の上、じゃがいもと玉ねぎの左、蜂蜜ポットの後ろ。そこに、隠れるようにして小さな本棚がある。 『白雪姫』『人魚姫』『赤 …