佳作 いつも優しく静かに傍らに 安田直子(やすだ・なおこ)・45歳 考えてみると、三度の飯より本が好きと言うくらいの子供達の本好きは、産まれる前から始まっていたのかもしれないと思う。 まさか自分が普通に子供の出来ない …
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佳作 たべもの 堀宗一朗(ほり・そういちろう)・58歳 こんなにも長く手元に置くことになろうとは、当時は思いもしなかった。 それは今から23年前のこと。東京へ出張した帰り、一歳半になる長男に土産をと、 八重洲の地下街 …
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佳作 わたし流 佐々木良子(ささき・りょうこ)・45歳 私の手は動かない。手はおろか身体の全てを動かすことができない。12年前、不慮の事故から首の骨を折り全身麻痺となった。長男四歳、次男一歳のときだった。ただ息をしてい …
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佳作 母と江戸川乱歩 後藤喜朗(ごとう・よしろう)・53歳 私の本棚にハードカバーの『江戸川乱歩全集』が鎮座している。30年以上も同じ場所に並べてある。実は、就職してから初任給で買い揃えた全集である。決して新書ではない …
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佳作 本読み 岩越正剛(いわこし・まさたけ)・34歳 私は読書が嫌いでした。大嫌いでした。それは恐らく、小学生時代の宿題が原因なのだと思います。 国語の宿題。『本読み』 国語の教科書を朗読し、親に聴いてもらうという …
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佳作 五十年前からの宝物 相野正(あいの・ただし)・66歳 夜半からひどい大降り、今日は一日止みそうもない。それからそれへと彼女の事を想ふ。我が恋は悲しき哉。私は初めて大きな悲しい溜息と涙がこぼれた。 「さびしさに雨だ …
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優秀賞 枕元に本を 古池美彦(ふるいけ・よしひこ)・29歳 重たい冬布団にくるまって寝転んだまま本を読むのが好きだ。できることなら、まぶたが落ちる寸前まで活字を追いかけていたい。耐えきれなくなったら本棚まで行くのは諦め …
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優秀賞 本の匂い 広瀬智子(ひろせ・ともこ)・31歳 中学一年の最初の国語の授業でのこと。 「こうやって、本の匂いをかいでみよう」 先生は、鼻先へ教科書を持っていき、ページをパラパラ繰ってみせた。 それはまぎれもな …
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優秀賞 早く続きが読みたいね 城田由希子(しろた・ゆきこ)・53歳 「早く続きが読みたいね」 こんな会話ができるようになったのはつい最近のことだ。単身赴任二年目の夫。私たち夫婦をつなぐのは本。夫は月に二度ほど新幹線で二 …
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家の光読書エッセイ賞 旅する気仙沼弁 感王寺美智子(かんのうじ・みちこ)・56歳 私が暮らす、仮設住宅の集会所に、小さな本棚がある。勝手に置いて、勝手に読んで、勝手に借りる、誰が管理するでもない。本の数は、百冊にも満た …
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