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第23回 審査講評 読書エッセイ

第23回「家の光読書エッセイ審査会」 審査講評

審査員

(敬称略)

落合 恵子
作家・子どもの本の専門店 クレヨンハウス主宰

落合 恵子

今回に限ることはありませんが、国内でも国外でも、どんなに本を読みたくても読めない人たちがいることを忘れてはいけないと改めて痛感しました。私たち大人は、世の中があやうい方向、戦争に向かわない社会、子どもはもとよりすべての人がゆっくりと本を開くことができる社会をつくっていかなくてはいけないと、特に思いました。

家の光読書エッセイ賞の『祖母の日記』からも同じことを感じました。過去の出来事から、平和であることのかけがえのなさを確かに引き出し、引き寄せ、学んでいく必要があると思います。

また、残念ながら入賞されなかった作品の中にも「この一行がとても好き」、「この三行が忘れられない」と頷ける作品がいくつもありました。今回は賞を逸しても、応募者のみなさまに心よりお願いします、ぜひ文章を書き続けていただきたい、と。

岸本 葉子
エッセイスト

岸本 葉子

いま、国内外で震災、戦争の状況が続いています。今回の家の光読書エッセイ賞『祖母の日記』は戦争というものを重く受け止め、とても胸に迫る作品でした。また、佳作の『天狗の血筋』からは、本を読む時間をもつことが当たり前ではなかったことを令和六年のいま、こういった作品に出会えたことをかけがえのない奇跡に感じています。

佳作『人生の一冊』からは、「紙の本」の意味を考えさせられました。私自身は紙の本に親しみのある世代ですが、これからはデジタルネイティブの世代が出てくる。そういった中で、紙の本が優位だ、という考えは避けているのですが、この作品では、十九歳の子が、偶然置いてあった本を手にする。見方を変えると、「本がこちら側に来てくれる」。これはデジタルでは叶わない、本との出会い方だと思いました。これからはさらに、本との出会い方も多様化していくと思いますが、紙の本というものも残っていってほしいと感じました。

安冨 ゆかり
JPIC読書アドバイザー

安冨 ゆかり

応募作品を拝読して感じたのは、みなさん、文章がとても上手で、「読ませられた」、という思いです。この読書エッセイは、宿題のように、書くことを強制されたものではありません。みなさん、ご自分の意志で、「書きたい!」という思いから書かれていらっしゃるわけです。それは、1,138という応募数も含めて、改めてすごいことだと思いました。

そして、今回は、本そのものや読書の思い出だけではなく、そこに人が介在し、その人とのつながり、その人への思いが書かれている作品が多かったように思います。本との出会いには、必ずと言ってよいほど、誰かが関わっているんですね。それは、親、兄弟、友人、いろいろですが、祖父母の登場する作品が多かったことが印象に残りました。

「読書感想文」とは違う、「読書エッセイ」ならではの特徴だと思います。

木下 春雄
家の光協会 代表理事専務

木下 春雄

エッセイの審査委員をさせていただいて思うのは、最近のことよりも、二十年、三十年前の出来事を書かれる方が多いということです。それは、子ども時代の経験や、印象はとても根強く残るからではないでしょうか。そして、その経験から「読書」に対してプラスの経験をした人たちがエッセイに応募してくださっていると思います。今回の入選作品はエッセイ集にまとめますが、エッセイ集を読んだ人たちに、元気や希望を与えられる作品が集まったという感想を持ちました。

以前、被災地で電気がまったく使えない状況のなか、避難先で図書館の本を山積みにして読んでいる子どもの映像を見たことがあります。きっと、その子は本からたくさんの勇気をもらっていたと思うんです。本会も雑誌、書籍を出版していますが、今後も「紙」の本は出し続けていく必要性があると感じています。

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