第22回「家の光読書エッセイ審査会」 審査講評
審査員
(敬称略)
阿刀田 高
作家
「家の光読書エッセイ」は、読書が人生に大きな良い影響を与えている結果をいろいろな形で発見できる、とても嬉しいコンクールだと感じます。
審査の際は、作品として楽しく面白く出来ているかを考えますが、優秀賞を受賞した『八階の小さな書店』のように、皆さんがあまりらないところでの読書体験も非常に興味深く読むことができました。
どうか、抽象的に読書を語るのではなく、自分にとってインパクトのあった切実な体験から、どこに感動したか、本当にありのままに書いてほしいと思います。
落合 恵子
作家・子どもの本の専門店 クレヨンハウス主宰
私がやっている専門書店は47年目を迎えました。大勢の方々が訪ねて下さり、親子三代にわたってお越しの方や、植物絵本を読んだことで研究者になったという方もおられます。それは、本が人生にいかなる意味を持つのかという問いに対する1つの答えではないでしょうか。
佳作の『叶うかな、叶えていたいな』の筆者は、今後違う人生を歩むかもしれません。ですが「図書館を作りたい」というまっすぐな思いをこんな時代だからこそ大切にしたいと感じます。皆さんの作品を通して本が愛されていることを感じ、とても幸せな気分になりました。
岸本 葉子
エッセイスト
この20年余りの間に読書の風景は大きく変わり、電子教科書で学ぶ世代が育ちつつあります。
今回の家の光読書エッセイ賞『終わらない冒険』は、体力も時間もない中で本を媒体につながる現代的な母と子の姿を伝えてくれます。受賞者の塩田さんは21歳で、電子書籍、紙の本、それぞれに親しむ世代をつなぐ世代として大変期待をしています。また優秀賞の『マイカー書斎』『嫁入りした本』をはじめ年齢層の高い方にも秀作が多く、幅広い世代の作品と出会うことができました。
安冨 ゆかり
JPIC読書アドバイザー
応募作品を読み終えた時、「亀の甲より年の功」という言葉が思い浮かびました。年齢を重ねた方々の文章には、若い方とのものとは違う味わいが感じられたからだと思います。
佳作の『立ち読みしてもいいですか?』は、そうそう昔はこうだった、ずいぶん様変わりしなぁ~、と思いながら読みました。誰もが生きてきた時代の中で本や読書と関わっていること、そして、人それぞれに物語があり、その主人公であることを、改めて感じます。
木下 春雄
家の光協会 常務理事
活字の読者が減っていると言われる昨今ですが、読書の良さを知る人は増えているのではないか。それは、今回応募してくださった900点近くの作品からも強く感じられることです。
つい先日も、家の光協会から本を出された大学教授から、その本を読み先生の授業を受けたくてこの大学に入った、という学生と何人も出会った、という話を聞きました。人の人生を左右する、読書のすごさを改めて感じます。