第19回「家の光読書エッセイ審査会」 審査講評
審査員
(敬称略)
阿刀田 高
作家
家の光読書エッセイ賞に選ばれた『本』は、書店の役割というものを的確に捉えた作品だと思いました。それぞれの街に優良・健全な書店が一軒はあってほしいという思いに大変心強く感じました。また、今回は全体的に親子での読書をテーマにした作品が目立ったように思います。家庭の中で読書が広がっていくのはとても嬉しいことです。
落合 恵子
作家・クレヨンハウス主宰
若者の活字離れが言われて久しい中で、若い層の方々からの応募が多かった事をとても嬉しく思います。読書エッセイ賞に選ばれた『本』では、書店員さんの一冊の本に懸ける思いが書き手の心をこれだけ動かした素晴らしさを感じました。そして、同じような場面がきっといろいろな書店であると思うと、まだまだ捨てたもんじゃないと心躍ります。
岸本 葉子
エッセイスト
本との出合い方は様々だなと感じました。『勝手に借りて勝手に返す』のように、大きな図書館に足を運ばないような人でも誰かが設けた貸本のような仕組みで次第に読書が生活の中に入っていく…そうした本との出合いの多様性が印象的でした。また、本の内容にそれほど踏み込まなくても何かを伝えうる作品が今回は多かったように思います。
安冨 ゆかり
JPIC読書アドバイザー
手が届きそうでなくても挑戦することは、読書にもあります。最初に読んだ時は理解できなかった作品が、歳を重ねながら読む内にその印象や楽しみ方が変化していく体験を、『背伸び』他いくつかの作品を通して思い出しました。『音の光景』では、本を読むという事と声との関わり合いに、新たな視点を気付かされたように思います。
木下 春雄
家の光協会 常務理事
昨今は利便性から、リアルな書店の大切さが置き去りにされているように感じます。『本』という作品では、書店に足を運んだからこその出会いや奥さんとの関係性の高まりが生まれました。昨今は、家族も含めた人間関係が希薄だと言われていますが、今回は本を通して家族との結びつきが深くなったという作品が多く、書店や図書館は大事な場所であると改めて感じました。