第18回「家の光読書エッセイ審査会」 審査講評
審査員
(敬称略)
阿刀田 高
作家
読書というのは、テレビやマンガに比べ言葉というものと非常に深く関わっています。私は、言葉が豊かでなければ考えが豊かであるはずもなく、言葉が美しくなければ考えも美しくない、と考えています。そういうことで、私の選考の目は読書の中から言葉をどう発見しているかという点に向いてしまいます。今回も読書の中に言葉を発見する、言葉の深さを知っていくという作品が受賞作品の中にあることを大変嬉しく思います。
落合 恵子
作家、クレヨンハウス主宰
応募作品を拝読し、思いだしたフレーズがあります。「言葉にならない思いがそこにあるとき、導いてくれるのは言葉である」というフレーズであり、すべての作品に共通する思いとして、読みました。また、さまざまな年代の方からご応募いただきましたが、年齢という垣根を越えた作品もあれば、一冊の本がモンゴル行きを決め、人生を大きく変えるきっかけとなったという作品もありました。非常に息苦しい時代でありながら、形式にこだわるのでなく、心の自由を大切にされる方がいる、とむしろ励まされました。
岸本 葉子
エッセイスト
「ワープのスイッチ」は目にした一冊の本がきっかけとなり外国に飛ぶという内容でしたが、本には自分やその家族といった日常の範囲を超えて、異文化や外国と出会う、あるいは繋ぐといった機能があるということを強く感じました。今回は7歳から96歳までの幅広い年齢層にわたり応募がありましたが、読書をする風景、本のある風景が実に多様であり、頼もしく思えました。
安冨 ゆかり
JPIC読書アドバイザー
本を好きになるきっかけは様々です。「本を読んでもらった」「残されたものを読んで」というのを読むと、改めて、両親や祖父母と言った身近な大人の影響力を感じました。時代背景や生活する地域の特性も含め、環境が大きく作用するということだと思います。読書離れと言われ、本を読む形態が多様化している今だからこそのサポートやきっかけづくりが必要だと感じました。
関口 聰
家の光協会 常務理事
今回も、大変幅広い世代の方々のご応募をいただき、誠にありがとうございます。人生の苦難に耐え、それを乗り越え、前に進むための力、言葉の壁を超える力、人と人、世代をつなぐ力、新たな人生にチャレンジする力など、読書の持つ力を再認識しながら読ませていただきました。また、そうした読書の持つ力を生み出すことになる、それぞれの本との偶然ともいえる出会いの不思議さを強く感じました。